シニガミチェーンメール
一年二組の教室は、
シニガミチェーンメールが
始まる前のような騒がしさや
明るさは、微塵も残っていない。
久琉斗は座っているし、
教室で空いた席は、綾介の椅子だけだ。
それが変に不気味で、
綾介は身震いしてから席についた。
チラ、と好きな女子_____
花香を見ると、その顔も月白色で、
怖がっていることがハッキリと伝わる。
他にも、蒼白な顔の生徒は、
何人も居た。
綾介のもう一人の親友、
未来も黙って俯いているのみだ。
まだ、今日のメールは、
誰にも届いて居ない。
綾介はそんな全員を見て、
不憫な思いに苛まれていると____
_____ガタリ。
椅子を引く音が鳴った。
全員の目は、その人物に向けられた。
椅子を動かしたのは、
女子軍のリーダー的存在である、
橋詰 裕美子(ハシヅメ ユミコ)。
裕美子が立ち上がって、
瑠々子を忌々しいとでも言うように、
鋭い瞳で睨んだ。
「みんな、こいつをモルテにしようよ」
「は?」
久琉斗を含め数人が、
間抜けな声を出した。
瑠々子は座ったままだ。
綾介が瑠々子を見ると、
その黒い長い髪の隙間から、
笑っているのが見える。
___ゾクリ。
戦慄が走った。
しかし、
綾介は誰にも言わなかった。
狂ってるのか…?
素朴な疑問を胸に抱いたまま、
裕美子の話に耳を傾けた。
「だって、昨日、
笑いながらこのゲームに
参加してたのよ!」
「裕美子ちゃん、落ち着いて…」
他の女子の言葉も、
裕美子が聞くことはない。
「絶対このままじゃ、
誰かこいつにハメられる!
きっと何か企んでるよ!
あんたがシニガミメールの
発信者じゃないの!?」
「発信者?違うわよ」
瑠々子が嘲笑うように裕美子を見た。
「そんなのも解らないの?」
裕美子はいい加減頭に
血が上ったようだった。
でも、裕美子の気持ちが、
綾介には理解出来た。
このゲームをしている時に笑う、
その異質さ。
きっと性格なのだろうが、
綾介にもう一つの恐怖を与えたものだ。
その時。
♫ピロンピロロン♫
誰かの携帯が音をたてる。
画面を覗いたのは、
クラス一のチャラ男、
新川 真司(ニイカワ シンジ)。
「きちまったよ…」
さすがのチャラ男も、
こんな時まで
チャラチャラしてはいられない。
真司は暫く
迷うような素振りをしている。
全員が固唾を呑んで見守る中、
真司が送信ボタンを押した。
数秒後、音は
_____鳴らなかった。