シニガミチェーンメール
「手を下ろしてください」
スッと手が下がる。
「昨日、一年二組のクラスメイト全員に
『シニガミチェーンメール』という
メールが届きました。
きっと、迷惑メールだと思って
削除した人も居るでしょう。
しかし、あのメールは本物です」
シーンと、少しのざわつきさえも消え、
教室は沈黙に静まり返った。
クラスの不良、
井上 玲二(イノウエ レイジ)が
バンッと机を叩いて立ち上がる。
「んな証拠あんのかよ」
「あります」
暁美は落ち着いたまま、
真っ直ぐに玲二を見返した。
「私のメールには、
こう書いてありました。
多分、皆には
書いていなかったと思います。
『今日、担任の林川先生が死ぬ』と」
「は?死ぬ?」
クラスがザワッと波紋ができるように
一気に騒がしくなった。
「静かに!」
暁美が叫んでも、意味はなく、
ザワザワ、ザワザワと
話す口を止めようとはしない。
『林川先生』『死ぬ』『嘘』
という単語が所々で聞こえた。
暁美が再度叫ぼうとした時__
ガラッ!
教室のドアが開き、
教頭がそこに立っていた。
瞬く間に、教室は静かになる。
「…君らに悲しい知らせがある」
暁美が椅子に座り、
代わりに教頭は教台に乗った。
「さっき__林川先生が、
電車に撥ねられて、亡くなられた」
シ…ン
教頭が伝えることだけ伝えて、
教室から出て行くと
教室内は混乱の渦に叩き込まれた。
「林川が死んだって!?」
「メールの通りじゃない!」
「本物じゃねえの!?」
「知らないに決まってんでしょ!」
「静かに!!」
暁美が大声で叫び、声は収まる。
「…本当に林川先生が
亡くなるという事になりました。
これは、シニガミチェーンメールが
本物という事じゃありませんか?」
暁美の声も、
若干震えているように感じる。
綾介は眉間にシワを寄せて、
前を真っ直ぐに向いていた。
本物?
あり得ねえだろ。
「なので…シニガミチェーンメールは
今日から始まります。
真剣に、やって下さい」
「ちょっと待って下さい」
綾介が手を挙げ、立ち上がった。
「シニガミチェーンメールが
本物かどうかは、
個々の思うままじゃないんですか?
それに、真剣にして下さいって…
委員長がこのメールを全員に送った訳は
ありませんよね?」
綾介がそう言うと共に、
暁美に疑惑の目が向けられる。
暁美は目を伏せた。
「私ではありません…シニガミ
チェーンメールの通り、林川先生が
亡くなったじゃないですか…」
「でも、それが本当に予言とは__」
綾介が言い終わらない、そのうちに。