シニガミチェーンメール
「なぁ、信友…
俺を選んでくれるよな…?」
信友と同様、
クラスの男子を仕切っている
小田 雅史が言った。
その瞳が真っ直ぐに信友を見つめる。
「…信友…私を…
選んでくれ…ないの?」
山地 白華が涙で潤んだ瞳を、
信友の黒い瞳にうつす。
「あ…いや…」
「私を…助けて…消えたく…ないの…」
白華がヨタヨタと歩いて、
ギュッと信友の手を握った。
信友の目が泳ぐ。
「なぁ…山地より、
幼馴染の俺の方が、大切だよな…?」
雅史が身体を震わせながら、
信友にどっちが大切かを問うた。
十五人は、この三人のことを、
見ているしかない。
「なぁ…俺の方が、大切だよな…」
「私の方が…大切でしょ…?」
白華が涙を流し、
雅史は歯を噛みしめる。
消えたくない。
「っ…どっちも…大切だ…」
信友には、
どっちか決めることが出来ない。
「…っ…」
その状態のままで、
五分が経った。
唾を呑み込む音が、所々から聞こえる。
そして、あと、一分。
「どっちか…決められねえよ…」
「なぁ…俺だよな…?」
「…っ…信友…」
あと、三十秒。
「信友っ…俺にメールを送れよ…」
「…私に…」
あと、二十秒。
「信友…」
あと、十秒。
「信友っ…」
信友は、消えたくない、と思った。
そして、二人の顔を見交わす。
「……」
五…
四…
三…
二…
「っ…ごめんっ白華!」
♫ピロロロロン♫
一…
「のぶ、と…」
白華が、消えた。
「っう、白華ぁ!」
雅史が信友に近寄る。
「っ…ありがと、俺を選んで…」
「うわぁぁぁぁああああぁ!」
信友は
叫んで
開いた窓へ
向かった。
数秒後、
聞こえたのは、
ドシャッという音__
綾介が
ガタッと
大きな音をたてて、
窓を覗いた。
糠るんだ泥に塗れた
表情のない、
信友_____
「…嘘だろ…」
綾介がつぶやいた刹那。
信友が、
消えた。
風に混じって雨が窓に入り、
綾介の黒い髪を濡らした。