フクワラ匕
音楽室に彼、黒川 翔也が入ってきた。
「わりぃ、待った?」
爽やかな笑顔であたしに近づく彼は
うちの学校のサッカー部のエースで
その実力はもちろん、そのルックスからも
女子生徒に人気がある。
その上、一部の男子生徒からも一目置かれている。
普通の女子なら彼に呼びだされた時点で
学校中を踊りまわる勢いで喜ぶだろう。
中学の頃もそうだった。
でも、あたしはその裏の顔を知っている。
というか、知ってしまった。
「ううん、待ってないよ」
変事がついかたくなってしまう。
二人の間に流れる微妙な沈黙。
沈黙を破ったのは黒川君だった。
「えっと…急になんだけど、
オレと付き合って欲しい 」
「えっ…?」
あたし驚いた顔をすると
彼は懐かしそうに目を細めて言った。