封船屋
扉が開くと、そこは赤一面の世界だった。

決して壁や床が赤いわけではない。


何が、部屋を赤色に染めあげている原因なのだろう。

目を凝らしてよく見ると、そこには握りこぶしほどの小さな風船が無数宙を漂っていた。

息を吹き込むと言っていたが、なぜ宙に浮かんでいるのだろうか?

一見普通の風船のようだが、ゴムのような質感ではなかった。
表面はつるりとした光沢がある。何か特別な素材で浮くように作られていているのだろうか?


どのくらいあるのか検討すらつかないくらい膨大な数だ。

まるで、紅く熟した林檎の林に紛れ込んだみたいだ。


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