封船屋
あまりの光景に目が離せない。


風もないのに、封船は小さく動いていた。
それは心臓が鼓動する感じと似ていた。


ひとつひとつに命がある。封船という“物”ではなく、生き物だった。


不思議と怖いとは思わなかった。
目の前の光景をすんなりと受け入れている自分の方に驚いた。

「これが…封船?」


「そうよ。どう、驚いた?」


驚くどころではない。心の深いところで、何かを感じさせるような…
とても言葉では言い表せない。

言葉とは何て不便なのだろう。言いたいときにふさわしい言葉がみつからない。
この感じを何とか伝えたがったが、出来なかった。
もどかしさだけが残る。

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