封船屋
「何て言うか…、もう凄いとしか…。」


「これはね、ひとつひとつが膨らました本人の心臓と同じ大きさなの。
その人とは別の、新しい命と同じなのよ。」

目の前に存在する物体…
形は風船だが、生きている。

“永遠に残る”と言うことは、この部屋でずっと生き続けるのだろうか?
目の前の全てが非現実的で、美しかった。


床にはひとつ、割れた風船がまるでひかれた猫のように、力なく横たわっていた。

「ふうさん、これは何で割れちゃったんですか?」

割れた封船を大切に手にとると、
「思いが叶ったか、もしくは思いが失われたかのどちらかよ。」

封船を見つめる姿が寂しそうだった。

叶ったなら喜ばしいが、わざわざ封船に込めるくらいだ。
ふうさんの寂しそうな姿からしても恐らく後者なのだろう。

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