冷たい上司の秘密の誘惑
「逃げたりなんてしませんよ・・・

朝食の買い出しに行ってただけです」

抱きつかれ落としそうになっていた袋を持ち直し、

篠田部長に持ち上げて見せた。


「起こしてくれればよかったのに」

そう言った篠田部長はフゥ~っと、溜息をついた。


「篠田部長、とっても疲れてるようだったので」

「・・・」


「どうかしましたか?」

「二人でいる時は、部長は止めないか?仕事中じゃないんだし」


「…イヤです」

「?!・・・なぜ?」


…もう一度、ちゃんと自分の気持ちを整理して、

それでも、篠田光世を心から好きだと思えたその時までは、

『部長』と、呼び続けたい。


「…部長は、部長だからです」

「言い訳になってないな・・・まぁ、いい」

そう言った篠田部長は、私の手から袋を取り上げると、

その手を自分の手と繋ぎ、中へと連れて行く。


…東京にいる時も、

こうやって、ずっと一緒にいられれば、

どんなに幸せだっただろう…そう思わずにいられなかった。
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