冷たい上司の秘密の誘惑
「ちょっと、そこの可愛い子」

「・・・」

歩き出して数分。

明らかに酔っぱらっている男が私の声をかけてきた。

私は聞こえなかったふりをして通り過ぎる。


「待ってって、ちょっとそこで一杯飲んでいかない?」

?!無視して行こうとするのに、男は私の腕を掴んだ。


「離してください!」

私はその手を振りほどこうと必死。

酔っぱらいのくせに、力は強い。


「一杯だけでいいからさ」

もう!しつこい!


「離してってば!」

私たちを見ている通行人たちは、好奇の眼差しで見てるだけ。

…誰も、助けてなんてくれない。

・・・こんな事になるなら、三谷先輩に送ってもらえばよかった。


「ほら、行こう」
「イヤです!」


「嫌がってんだから、離せ!」

誰も助けてくれないと思っていたのに、

誰かが私の前に立ちはだかり、男の腕を捻り上げた。


「イテテテ!・・・わかったよ」
男は渋々どこかに消えて行った。

「すみません、たすかりました」
私は深々と頭を下げる。

「・・・」
恩人は、黙ったままだった。
< 43 / 155 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop