極上エリートの甘美な溺愛
思いがけない再会



既に日が落ちた大通りには、街路樹を彩る電飾の華やかさがくっきりと浮かび上がっていた。

玲華は色とりどりに輝く光に視線を向けながらも、それを楽しむ余裕がないのかその表情は硬い。

待ち合わせにかなり遅れていることに焦り、何度も時計を気にしていた。

ベージュのタイトスカートから伸びる足には5センチのヒール。

図面が入っている大きなカバンが膝に置かれている。

そして、赤信号で車がとまる度に眉を寄せ、隣で運転をしている篠田拓人をちらりと見ながらため息をつく。

「一時間以上の遅刻なんですけど」

「仕方ないだろ。お客様がなかなか決めてくれなかったんだから」

「わかってますけど……」

肩を落とし何度も時計を見ては、焦る気持ちだけが募っていく。

仕方がないとわかってはいても、人を待たせていると思うと、落ち着くなんて無理だ。

流れる景色を見つめながら苦笑している彼女は、片桐設計事務所で住宅の設計を担当している。

営業担当を通じてあがってくるお客様の要望に応えて図面を描いたり、構造計算をするのだが、営業を介してお客様の要望を理解することは意外に難しく、そして、建築の細かい決まりをお客様に理解してもらわないととんでもない家を注文されることになる。

そんな理由から、玲華は可能な限り営業と共にお客様に直接会って言葉を交わすようにしている。

今日も、一緒に仕事をする営業の篠田拓人と共にお客様の家まで出向き、細かい部分の打ち合わせをしてきた。

それほど時間がかからないと思っていた打ち合わせは、予定よりかなり長引いた。

大切な約束がある玲華は会社へは戻らず、約束の場所まで篠田に車で送ってもらう途中だ。

本来なら一度会社に戻って今日の打ち合わせ内容を図面にしたいところだが、今日しか時間を合わせられなかったメンバーとの約束を優先させてもらうことにしたのだ。


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