極上エリートの甘美な溺愛
高校生活最後の一年間は、お互いの存在を他の誰よりも近くに感じ、喜怒哀楽の多くを共有してきたと思っていたのに、理由も告げられず自分の思いは拒まれてしまった。
玲華が楽しいと思っていた将平との日々の全てを否定され、自分が感じていたほど将平は自分と過ごした時間を楽しいと感じていなかったのかと落ち込んだ。
恋人として受け入れてもらえる自信があるわけではなかったとはいえ、自分の思いを拒まれるということは、それまでの二人の時間をも否定され、拒まれたようで、そのことが一番つらかったけれど。
「私のことが嫌いじゃなかったんだ……」
それを知り、玲華の心の中は穏やかで落ち着いたものとなり、ふっと肩の力が抜けた。
申し訳なさそうに自分を見つめる将平に視線を戻すと、そこには既に大人になった初恋の人。
高校時代よりも精悍になった顎のラインや、幾つもの経験を重ねて深みを含んだ口元。
そのどれもが、玲華の中に眠っていた将平への恋心を再び息づかせる。
将平を好きだという、長い間心のどこかに潜めていた思いを捨て去ることは、難しい。
けれどその一方で、将平が玲華を拒んだ理由を考えると、『やり直したい』という言葉を素直に受け入れられるのかわからず、躊躇してしまうのも確かで。
高校時代に将平が抱えていた、恋愛に対する苦い思いを今はもう乗り越えているのだろうかと、気になって仕方がない。
たとえやり直したとしても、玲華の思いの強さと同じ強さで、将平も玲華を思ってくれるのだろうか。
自分が求めるほどの強さで将平から愛されないことに疲れて、いつか自分も将平から離れていくのではないか。