極上エリートの甘美な溺愛
そして、将平がそれを受け入れ、あっさりと自分を手放すんじゃないかと、予想外の不安が溢れて、玲華はずん、と落ち込み、俯いた。
「私、本気で将平を好きだったのに……」
呟くつもりのなかった言葉が思わずこぼれる。
「ああ。今ならわかる。あの頃俺を好きだと言って側にいた女の子たちだって、俺が同じだけの気持ちを返して大切にしていれば、俺に飽きて離れていくなんてこともなかったはずだってわかる」
あの頃将平に思いを伝え、近くにいられることを心から喜んでいた女の子たちは、彼女として付き合始めても尚、自分に関心を向けてくれない恋人にがっかりし、諦め、離れていったに違いない。
それは決して彼女たちが望んでいた結末ではないはず。
好きな人から離れる未来を最初から想像して付き合い始めるなんてできないはずだから。
将平と恋人との関係が長く続かなかったとすれば、その原因の大部分は将平の醒めすぎた心によるものだったんだろう。
「高校生だったしね。子供だったんだね……」
そう言葉にしてしまえば簡単すぎるけれど。
大人になった今ならば、高校時代の自分たちの未完成な恋愛を、違う側面から見ることができる。
きっと、恋人との関係をよりよいものにできるよう、努力もするはずだ。
「今なら、玲華の気持ちをちゃんと受け止めて、俺の全てで大切にする」
将平は、玲華にぐっと身体を近づけ気持ちを告げた。
その姿と甘い言葉に玲華の心は跳ね、やはりまだ将平への思いは消えていなかったんだと感じる。
テーブルの上に置かれた両手をぐっと握りしめてその想いをかみしめるけれど。
玲華は自分がこの先どうすればいいのか、将平の気持ちをどう受け止めればいいのか戸惑っていた。