極上エリートの甘美な溺愛
客から声をかけられるたびに笑顔を返している藍香の姿を見ながら、将平はふっと体を椅子に預けた。
「いつも、あんな感じでたくましい美人さんなんだ。高校時代に妊娠して、恋人と結婚して。で、大学も通ったパワフルな女性でさ。俺の両親の大切な親友」
「へえ、そうなんだ。旦那さんは、あの人?」
カウンターの向こうの調理場からちらりとその顔が見える男性。
玲華はそちらに視線を向けた。
「ああ。もともとは藍香さんのバイト先の先輩だったらしいけど、高校生の彼女の妊娠を知っても動じずに結婚したっていう人。どちらかというと優しすぎて壊れそうな人なんだけど、藍香さんや息子の陸、娘の晴花には存分に男らしさを見せる人らしい」
「へえ。優しそうな人なのに、いざとなったら男らしいんだ。理想だね」
「……まあな」
将平の低い声に、玲華は視線を戻した。
今藍香さんが持ってきてくれたチキンサラダを食べながら、「うまい」といいながらも不機嫌だとすぐにわかる表情。
フォークでチキンを刺す様子もどこか投げやりだ。
「おいしくないの?」
玲華もフォークを手に取り、チキンを口にした。
「うわっおいしい。ガーリックも効いてるね。オーブンで焼いてるのかな」
味を確かめながら、自分でも作れないだろうかと思っている玲華の前に、再び将平の手が伸びてきた。
その手はテーブルの上に幾つか並んでいる皿をすっと横にずらし、玲華の手の側に落ち着いた。
「な、何……?」