極上エリートの甘美な溺愛
背中を向けた将平から途切れ途切れに聞こえてくる声。
「は?藍香さんから連絡いった?相変わらず早いな……で?」
いら立ちと焦りが混じった声が気になり、玲華は将平の背中を見つめ耳を傾けていた。
父親から電話なんて、一体何があったんだろう。
それに、藍香さんというのはランチを食べたお店で紹介されたあの女性……。
ため息を吐き、投げやりな声で父親と会話を続ける将平を気にしていると、千春が玲華の肩をそっと叩いた。
「気にすることないよ。きっと玲華ちゃんのことがお父さんに伝わってからかわれてるだけだから。藍香さんって今聞こえたけど、彼女のお店に行ったの?」
「あ、はい。お昼をいただいたんですけど、行ったことがあるんですか?」
「うん、将平が一度連れて行ってくれたの。あまりにもおいしいし藍香さんは素敵だし、最近では将平抜きで行くことの方が多いかな」
「そうなんですか」
「藍香さんは将平のご両親とは仲がいいから、玲華ちゃんのことを連絡したんだと思うよ。将平のことを藍香さんはすごくかわいがってるから、嬉しかっただろうしね」
「そ、そんなこと、嬉しかったなんて……」
千春の言葉が信じられず、両手で顔を覆いながらあわあわする玲華に、慎も声をかけた。
「嬉しいのは、藍香さんだけじゃなくて将平だってそうだと……いや、藍香さんよりももっと将平の方が嬉しいんじゃないか?」
「あ、絶対そうだね、私もそう思うー」
「だろ?今だって面倒くさそうに親父さんと話してるけど、悪い気はしてないはずだな。うん、間違いない」
慎の言葉に玲華は将平の後ろ姿を見ると、片手をジーンズのポケットに無造作に突っ込み、だるそうに立ってはいるものの。
「だから、今度親父にも紹介するから」
と呟く声はどこか嬉しそうに聞こえる。