極上エリートの甘美な溺愛
「住宅会社は土日が休みじゃないから休みも友達と合わせにくいし、毎晩遅くまで残業して体はへとへとだけど。こうして自分の手がけた家を見て、幸せな気分を味わえるから続けられるんだよね」
既に見えなくなった家から名残惜しそうに視線を外し、玲華は助手席に体を戻した。
玲華が設計の最初から最後までメインで携わった家。
その家をこうして将平と一緒に見るなんて、本当に、不思議な気分。
玲華は自分が経てきたこれまでの時間のほんの一部だけでも将平に知ってもらえたことが想像以上に嬉しかった。
将平と会わなかった長い時を、決して無駄に過ごしていたわけではないと証明してみせたかったのかもしれない。
自分が設計した車を自分で運転するほどの成長を遂げている将平の傍らにいるのならば、それ相応の実績による自信が欲しい。
将平の側にいてもいいのだろうかと不安に埋め尽くされている心の片隅に、ほんの少しだけ明るい光が生まれたように思えて、玲華の心はさらに弾む。
「設計って、いい仕事だな」
将平の声が車内に響いた。
「うん。私も最近、ようやくそう思えるようになったの。自分が設計した家で楽しい毎日を過ごしている人がいると思うと、本当に嬉しい。でも、今日こうして『Rin』に乗ってみて、将平ってやっぱりすごいって思ったよ。『Rin』をデザインした将平の仕事には、まだまだ追いつけない」
玲華の言葉に、将平は「それほどでも、ないけど」と言いながらも嬉しそうに笑った。
他の誰から何を言われるよりも、玲華からのその言葉には将平のこれまでの努力を結実させる響きがあった。
将平が玲華と離れていた間、ふとした時に心の片隅をかすめる温かい存在。
それが玲華だった。