極上エリートの甘美な溺愛
「俺が新商品の設計に携わるって決まった時に、真っ先に頭に浮かんだのは玲華だった」
「え?」
ゆるり、振り返るような調子で、将平の口を突いて出た言葉に玲華は戸惑った。
運転席を見れば、どこか感慨深い横顔。
穏やかにも見える口元からは今にも笑い声がこぼれそうで、それに気付いた玲華は、やはりわけがわからず、微かに首をかしげた。
将平が口を開くのを待ちながら、一体どういう意味だろうかと気持ちを引き締めた。
すると、将平はそんな不安げな空気を感じ取り、ゆったりとした声で話し始めた。
「高校時代、静かなエンジン音の車だったら家族旅行がもっと楽しいのにって言ってただろ?あの言葉はずっと俺の頭の中にあったんだ。玲華が忙しい両親と一緒に過ごせる貴重な時間を、車のエンジン音に邪魔されたくないって言ってたから、極力その願いを叶えようと試行錯誤しながら作り上げたのが、『Rin』なんだ」
そう言い終ると、将平は意味ありげにちらり、玲華に視線を投げた。
すぐに前方に視線を戻したけれど、その一瞬の意味に、玲華ははっと声をあげる。
「ほんと?確かに将平にその話をしたことは覚えてるけど、まさかずっと覚えていてくれたの?」
「ああ。それだけじゃない。後部座席の足元を広くする、とか椅子をリクライニングさせる時に指を挟んだりしないようにスムーズに動かせるように、とか。あの頃玲華が独り言のように言っていたことを、幾つか取り入れたんだ」
将平の言葉に、玲華の記憶が蘇る。