極上エリートの甘美な溺愛
高校時代、将平から自動車の設計をしたいという夢を聞かされた時、玲華が自動車への幾つかのアイデアや不満に思うことを軽い気持ちで言った気がする。
どんなことを言ったのかも覚えていないけれど、聞かされた将平はそのことをしっかりと覚えているらしい。
玲華が口にした無責任な意見を取り入れ、こうして商品となって市場に出回っている。
自分の知らない時間、知らない場所で、将平は玲華のことを考え、そして玲華の思いを具現化してくれた。
玲華は、助手席の横にあるレバーを動かして、背もたれを後ろにそっと倒してみた。
玲華の体は、ほんの少しの力で滑らかに後ろに倒れていく。
滑らかで、一気に倒れるのではなくゆっくりと倒れていくことに感動し、玲華は思わず「うわあー」と驚きの声をあげた。
ほぼフラットになるまで倒れた背もたれに体を預けながら、玲華は溢れてくる思いを隠すようにそっと将平を見た。
「私と会えない時も、私の事、時々は思い出してくれていたんだ……」
「もちろん。玲華のことを何度も思い出しては後悔して、自分の不甲斐なさを実感して。いつか玲華に会える時があれば、と思いながら『Rin』を仕上げていったんだ」
少しの迷いも感じさせない口調から、将平が長い時間、その思いを抱いていたんだろうとわかる。
「……それは、どうも」
玲華は少し照れながら、小さく呟いた。