極上エリートの甘美な溺愛
「……は、えっと、何のことでしょうか?」
「葉山は素直だからな。顔を見ればすぐにわかるよ」
のどの奥を震わせて笑う篠田に、玲華は悔しそうに口元を結びながらも気持ちを落ち着けようと息を吐いた。
「私だって、篠田さんの『Rin』が青ってすぐにわかりましたよ」
「は?」
「だって、沙耶香は青が好きでしょ」
勝ち誇った笑顔で言う玲華に、篠田は虚を突かれたように無言になった。
その無言は肯定を意味するようで、篠田の悔しげな表情の中には、どこかほっとしたような感情も浮かんでいた。
玲華が沙耶香との関係に気付いているのではないかと、感じてはいたが、はっきりと口にする彼女を見ながら、自分はそれを望んでいたんだと思った。
自分と付き合っていることを社内で公にすることを嫌がる沙耶香のために、ひっそりと続けてきた関係だが、玲華がにやりと笑いながらからかう様子に嬉しさも感じる。
仕事のことではいつでもはっきりと自分の意見を口にする篠田の口ごもる様子と、沙耶香のことを否定しない優しい視線。
玲華は自分でも調子にのっていると感じながらも、からかうような口調で言葉を続けた。
「篠田さんの車に、私が沙耶香の誕生日にプレゼントしたピアスが落ちてたし。
あ、安心して下さい。超機密扱いで、口は閉じてますから」
口元を両手で隠し大げさな仕草を見せる玲華に苦笑しながら、篠田は肩をすくめた。
そして何かを吹っ切ったような優しい目元でほほ笑む。
「まあ、ばれたらばれたでいいんだけどな……。あいつが……沙耶香が秘密にしろってうるさいから俺も黙ってるだけで」
「まあ、私もわからなくはないです。篠田さんみたいに社内でも有名な男性と付き合ってたら、自分の身が危ないですからね。……女の嫉妬は怖いですから、沙耶香もその辺りを考えて黙ってたんですよ、きっと」
「確かにそうなんだけどな。『拓人を好きな女から恨まれて自分がどんどんやつれていくなんていやだ。付き合ってる事を言うなら別れる』なんて半分脅されて。そんなことを言われても沙耶香一筋の俺っていいオトコだろ?」