極上エリートの甘美な溺愛
卒業式の朝、ふられた悲しみをふっきるように明るい笑顔で制服に袖を通し、高校生活最後の登校をした。
悲しみと寂しさが混ざりあう何とも言えない感情もてあましながら、玲華は必死で笑顔を作っていた。
そして。
式が始まる直前、廊下の片隅に突然呼び出された玲華は、仲が良かった純太に告白された。
「ずっと好きだった」
真摯な言葉と誠実な瞳。
純太のその言葉に戸惑いを覚えながらも、やはり、嬉しかった。
告白されたことが初めてというわけではないけれど、それでも、友人として大好きな純太の言葉は、とても嬉しかった。
けれど、玲華はまだ昇華できていない将平への気持ちを正直に伝え、ふられた事も告げた。
「ごめんなさい。純太とは付き合えない」
小さく頭を下げる玲華に、純太は悲しそうに笑いながらも、
「卒業したら、会えなくなるかもしれないんだし、もう一度あたって砕けてくれば?俺の事をふった勢いで行ってこいよ」
純太の謎めいた笑いと共に背中を押された玲華。
その後すぐに始まった卒業式の間中、もう一回告白なんてできるんだろうか、と心の中はざわめき、校長先生の話どころではなかった。
式が終わったあと、玲華の父がカメラを片手に娘の晴れ姿を撮りにやってきた。
玲華の写真はもちろん、友達同士の写真も撮ってくれた。
その時、その場に見当たらない将平をみんなで探した。
玲華は、ふられてからまだ一言もしゃべっていない気まずさと、もう一回告白なんてできるんだろうかという緊張感を抱えながら裏庭へ行くと、将平が同じクラスの小島美保に告白されていた。
「いいよ、つきあっても」
という将平の言葉が耳に入ってきた瞬間、将平が玲華に気付いた。
「あ……父がみんなの写真を撮ってくれるって言ってるから、よかったら来て」
目を合わせないように話し、走り去る玲華。
その後ろ姿を悲しそうに見つめる将平。
結局、玲華の二度目の告白は幻のまま終わり、父が撮ってくれた友達との写真を最後に、将平の姿を見ることはなかった。