極上エリートの甘美な溺愛
親しい距離感で笑い合っていたあの高校時代でさえ、ここまで将平の気持ちが昂ぶっているところなど見たことがなかった。
あの頃の、自分の気持ちを曲げることもなく、本心を露わに見せることもなかった将平の飄々とした姿とは全く違う今の様子を、玲華はどう受け止めればいいのかわからない。
目を細め、まるで睨みつけるような将平の視線の先をたどると。
そこには、篠田が運転席のドアに手をかけた姿勢で立ち尽くしていた。
篠田もまた、将平の様子に驚き、何度か首を傾げた。
この間、居酒屋で会っているとはいっても言葉を交わしたわけではなく、直接の知り合いというわけではない将平から睨みつけられて、驚くのも当然だ。
自分が一体何をしたというのか。
そんな篠田の心境に構うことなく、将平は低い声で言葉を続けた。
「玲華のことは、諦めてくれ。どんなことをしても、あんたに玲華は渡さないから」
ようやく呼吸が落ち着きを取り戻し息遣いも穏やかになった将平の、覚悟を決めたような言葉に篠田は面白そうに口元を上げた。
篠田は仁王立ちのまま動こうとしない将平と、何が起きたのかわからずオロオロしている玲華を交互に見ながら、「え?俺?」と呟き笑う。
「玲華はやらないって、えっと、俺が葉山のことを欲しいとか、言ったことあったか?」
首を傾げながら呟く篠田の言葉に、玲華はぶんぶんと首を横に振った。
将平が何を根拠にそんなことを言っているのかわからない。
自分が篠田のものになるなんてこと、あるわけないのに……。
単なる仕事上のパートナーであり、玲華からみれば尊敬すべき先輩。
その仕事ぶりに触れるたびため息をつきたくなるほどの優秀さにやられているというのに。
第一、篠田には沙耶香という恋人がいるのだ。