極上エリートの甘美な溺愛
なんの冗談を言ってるんだろうかと将平の顔を見れば、冗談では済ませられないような怒りが浮かんでいた。
体の横でぎゅっと結ばれた手は少し震えていて、将平の感情の荒々しさが見て取れる。
「将平……」
「あんたが玲華にプロポーズして、シルバーの『Rin』に乗せようとしてるのはわかってるけど、それに。玲華から逃げて、傷つけたのは俺だけど……こいつは渡さない」
唸るような低い声でそう呟いたかと思うと、将平は玲華の腕を掴んだ。
「……えっ?」
将平にぎゅっと掴まれた腕を見下ろしながら、将平の言葉が胸に染みてくる。
何を勘違いしているんだと呆れながらも、自分の為にここまで必死になって篠田に食い下がる将平を、愛しく思わないわけがない。
自分への強い思いを恥ずかしげもなく口にしているのは、紛れもなく自分が愛してやまない男なのだから、尚更だ。
もう一度自分との関係をやり直したいと言った将平の深い思いを、ようやく受け入れられたような気がする。
勢いと強気な言葉で玲華を右往左往させていた将平の笑顔の向こう側に、どれほどの思いがあったのだろう。
そう思った途端、自分の腕を掴む将平の手から離れたくないと、玲華の心は正直になる。
掴まれた腕を振り払おうともしない玲華。
それどころか、口元を綻ばせ喜んでいるようにも見える。
彼女に並んで熱い感情を見せる将平。
そんな二人を見ながら、篠田はくすりと笑い、大きな息を吐いた。
何をどう勘違いしているのかわからないが、自分が玲華にプロポーズすると思い込んでいる将平に、羨ましさも感じる。
沙耶香を愛し、大切にしているはずの自分の思いは、ちゃんと相手に伝わっているのだろうかと思い、将平に少しの羨ましさを覚えた。
そして、今まで見たこともない女の顔をして俯いている玲華にからかうような声をかけた。