極上エリートの甘美な溺愛
そして、何もなかったかのように手元のビールを手にすると。
「玲華、ビールのおかわりは?」
くすくす笑いながら玲華のグラスにビールを注いだ。
金色に輝くビールがなみなみと注がれ、綺麗な泡が出来上がる。
そういえば、入社して以来ずっと、沙耶香がビールを注ぐと綺麗な泡ができると評判になっている。
玲華はそのことを思い出して、ふっと笑った。
「篠田さんも、ビールのおいしそうな泡を作ってくれるんだよね」
「……あ、そうだったっけ?」
「ふふっ。そうなのよね。私がコツを教えってって言っても教えてくれないのにさ、そっか。大切な女の子には教えてあげるんだねー」
玲華がからかうような声で沙耶香の顔を覗き込むと、沙耶香はさらりとその言葉をかわし、あっさりと答えた。
「篠田さんの大切な女の子って、誰のこと?」
「……さあ。少なくとも私じゃないと思うけど?」
「ふふっ」
玲華と沙耶香の意味深な会話を隣で聞いていた将平は、頬杖をついたままの姿勢で空いていた手をすっと伸ばした。
「玲華、そのスマホ貸して」
将平は不機嫌な声を隠そうともせずそう呟くと、玲華が手にしているスマホを取りあげ、赤外線通信でさっさと二人のアドレスをやりとりした。
「はい、これで登録完了。これから二次会のことで話す機会も多くなるし、いつでも連絡してこいよ」
「あ、ありがとう……」
将平の連絡先が増えたスマホを返されて、玲華はじっとそれを見つめた。
ストラップも何も付いていない白いスマホが、今までよりもかなり大切なものになったように感じる。
二次会の担当同士なんだから、こんな流れは当然のこと。
将平にしてみれば、相手が玲華でなくともこうして連絡先を交換するはずだ。
まるで業務の一環のように。
そう自分に言い聞かせながらも、明るく弾む気持ちが玲華を包み込んだ。