極上エリートの甘美な溺愛

メール、してもいいかな、いいよね、と心で自問自答しつつ、そっと、玲華が視線を上げて将平を見ると、彼は隣に座っている沙耶香とにこやかに話をしていた。

まるで玲華との連絡先の交換にはなんの意味もないようなその態度に、彼女は少しムっとした。

「私、亜紀自動車が最近出したRinが好きなんだ。ショールームで見て一目惚れ」

将平と話している沙耶香の言葉に、亜紀自動車の面々が嬉しそうに話に加わる。

「Rinは俺ら全員が関わってるんだ。将平はデザイン部でRin開発のリーダーだし、俺と晴樹はRinの営業担当。で、誠はRinの宣伝担当。言ってみれば、Rinは俺らの子供のようなもんだな」

「そうだなあ。俺はRinが売れていくのを見るのは嬉しくもあり、寂しくもあるな」

 将平の一言に、一斉に頷く亜紀自動車チーム。

「そう言えば、篠田さんもRinに買い替えるって言ってたよ」
 

思い出したような玲華の言葉に沙耶香はちらりと視線を合わせ、小さく頷いた。

驚くわけでもなく、無関心を装っている風な沙耶香の仕草だが、俯き口元をきゅっと寄せている表情からは、そのことを沙耶香が既に知っていたと簡単にわかった。

それでもそのことに関して何も言わないということは、篠田との関係がどんなものであれ公にはしたくないのだろうということも簡単にわかる。
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