極上エリートの甘美な溺愛
思わず後ずさりしてしまいそうな、怖い顔をしている。
彼と過ごした過去のいくつかを思い出しても、見たことがないほどの。
どうしてなのかわからず、玲華は黙ったまま見つめ返した。
その反面。
離れた場所にいたはずの将平が、自分を見つけてくれたと気付いた玲華は、それまで抱えていたみじめさをカバーするくらいの嬉しさを感じた。
慌ててここまで玲華を追ってくれたとわかる荒い呼吸にも、どきりとする。
「来たなら声くらいかけろよ」
それまでの厳しい表情とは違う、優しい声が聞こえた。
玲華を見下ろす瞳には、戸惑う玲華の顔が映っていて、その瞳の向こう側には。
玲華に会えた嬉しさが見え隠れしている。
そう思うのは、自分に都合がいいだけの解釈だと、玲華の感情は複雑に揺れた。
「……将平、仕事はいいの?こんなにお客様が来ていて、時間ないんじゃないの?」
この場から逃げ出そうとしていた自分を隠すように、玲華はあたりを見回した。
確かに多くのお客様で賑わっている。
将平に、自分を構う時間などあるとは思えない。
玲華のそんな思いを察したのか、将平は小さく笑うと。
「四六時中ショールームに詰めてないといけないわけじゃないから大丈夫。それに、俺は設計だから特に任された仕事もないし。あ、昨日一緒にいた営業の慎はかなりばたばたしてるけどな。ところで、もう帰るのか?」