極上エリートの甘美な溺愛
それを望んでいないような声。
けれど。
せっかく玲華がショールームに訪ねて来てくれたのだから、もう少し一緒にいたいという将平の期待に反して、玲華は首を振りながら残念そうに答えた。
「昼休みを抜けてきたから、そろそろ私も仕事に戻らなきゃ」
思わず引き留めようかと、将平は口を開いたが、制服姿の玲華に視線を落としながらぐっと堪えた。
着替える時間も惜しんでここに来てくれたんだろうと思うと、それだけで気持ちは和らぐ。
できれば昼食でも一緒にとりたいところだが、そんな気持ちを隠す余裕も生まれた。
「そうか……。まあ、仕事なら仕方ないな。あ、Rinだけでも見て帰らないか?」
「うーん、残念だけどまた今度にする。それに、篠田さんがRinに買い替えたら仕事で乗せてもらえるだろうしね」
近々『Rin』を購入する契約を結ぶと篠田が言っていたことを思いだし、玲華はふっと笑った。
これまで通り、篠田と一緒に仕事を進めていくのならば、きっと自分も篠田の『Rin』に乗る機会はあるだろうけれど。
自分よりもまず先に沙耶香が助手席を温めるんだろうなと思い、にやりとした。
もしかしたら、再びピアスを落としたりするのかなと思うとおかしくて、小さな笑い声が漏れる。