極上エリートの甘美な溺愛
玲華は、とくに表情もないまま聞いている将平の手から写真を取り、悲しげに見つめた。
美保が将平のことを好きだったことは、誰もが知っていた。
友達以上の関係を求めて将平の側にいた彼女の苦しみは、同じように将平を見ていた玲華には痛いほど理解できた。
玲華と違って自分の気持ちを素直に口にし、何事にも積極的に動く美保でさえ将平に対しては臆病になっていて、思いを伝えられずにいた。
そんな様子を近くで見ていた玲華は、美保が将平に思いをぶつけ受け入れられたことに羨ましさは覚えながらも、彼女を祝福する気持ちもまた大きかった。
だから、二人を裏庭で見た時、何も言わずに立ち去ったのだ。
本当に、美保は幸せそうだったから。
将平のことは諦めようと、そう思いながら。
「父さんがこの写真を撮ってる時も、自分はちゃんと笑っているのかどうかよくわからなくて必死だったんだよ」
冗談めかしてはいても、どこか将平を責めるような玲華の言葉に、じっと耳を傾けている将平。
記憶の中の玲華とは違う激しい口調に驚きながら、卒業式のあの日、自分が軽はずみに美保の気持ちを受け入れてしまった過去を思い出していた。