極上エリートの甘美な溺愛
玲華から気持ちをそらすためだけなら誰でもよかったのかもしれない。
将平は、唇をぎゅっと結んだ。
玲華は純太と付き合ったほうがきっと幸せになれるだろうと勝手に結論付け、そして美保の思いをとりあえず受け入れた。
そんな自分の過去を何度も悔やんだ。
自分の浅はかな行動が、結局は美保をも傷つけたのだ。
「美保とはしばらく付き合ってたけど、夏前には別れたんだ」
「なんで……?って、いまさら私には関係ないよね……」
「俺は……」
投げやりにも聞こえる玲華の声にはっとした将平が、何かを話そうとその手を伸ばした。
テーブル越しに掴まれた玲華の手は、その瞬間ぴくりとしたものの将平の手の温もりから逃れようとはしない。
というよりも、玲華はその手を振り払えなかった。
初めて感じる将平の体温が、玲華の心の中まで染みわたっていく。
高校時代、ずっと好きだった人の体温。
そして、必死であきらめた温もりに、今になって、じわじわと浸食されていく。
「将平……」