極上エリートの甘美な溺愛
テーブルの上で重なり合った手を、二人で見つめていると。
玲華の鞄の中からスマホの着信音が響いた。
「あ、ごめん。この音、篠田さんだ……。仕事のことかも」
申し訳なさそうに呟きながら、慌てて電話に出る玲華。
将平の手から抜け出した自分の手に寂しさを覚えつつ、意識を電話に向けた。
「お疲れ様です。え?明日ですか?はい、空いてますけど。……家まで迎えに来てくれるんですか?はい、じゃ、今晩中に図面あげておきます」
ちょうどテーブルの上に広げられていたスケジュール帳にメモを取りながら、玲華はしばらく篠田と話を進めた。
その表情は仕事に向き合う真面目なもので、恋愛まじりの色気のあるものではない。
責任ある仕事をしているのだから、それは当然のことだろう。
そうわかってはいても、玲華と篠田との関係を訝しんでいる将平にとっては心穏やかなものではない。
そして、卒業前に純太と付き合い始めたと思っていたのは単なる自分の誤解で、おまけに美保からの告白を玲華に見られていたと知って焦り、テーブルに置いた手をぎゅっと握りしめる。
純太とは付き合っていなかったのか……。
高校を卒業してからは、玲華のことを忘れたいという思いが強く、当時の仲間たちとはほとんど連絡をとりあっていなかった。
みんなで会えばきっと玲華が現れる。
他の男のものになった彼女を見たくなくて、仲間たちとは断絶に近い状態で数年を過ごしてきた。
篠田との話を終え、スマホをカバンにしまう玲華を見つめながら、将平はそんなこれまでの自分を悔やんでいた。