極上エリートの甘美な溺愛
俯き考え込む玲華を、将平はしばらくの間じっと見つめていた。
落ち込んでいると一目でわかる玲華から視線をそらすことなく、どこか探るように。
そして、ぐっと口元を引き締めたかと思うと、低い声で呟いた。
「水曜日は休みだろ?買い出しはその日にしないか?」
「あ、買い出し……」
玲華は、その声にはっとし、思い出したように頷いた。
二次会の打ち合わせのためにここにいることを思い出し、気持ちを切り替える。
目の前にある将平の整った顔にときめく気持ちを隠したまま、小さく笑った。
「うん。水曜日なら大丈夫だよ」
住宅メーカーも自動車メーカーも、土日は営業、水曜日は休日という会社が多い。
偶然だとはいえ、玲華はそのことが嬉しかった。
少なくとも、その日は将平と過ごすことができるのだから。
たとえそれが単なる二次会の買い出しだとわかっていても、玲華の心は弾んだ。
そんな玲華の心に気付いているのかいないのか、将平はにやりと笑うと、もったいぶるようにゆっくりとした口調で呟く。
「じゃ、俺も負けずに7時に迎えに行くから」
「え?早すぎない?お店だってまだ開いてないと思うけど」
「せっかくだから、ドライブも兼ねて出かけよう。Rinで迎えに行くから早起きして待ってろ」
玲華に選択の余地を与えないとでもいうような強い言葉で将平は頷くと、「玲華がRinの助手席に乗る初めての女だな」とぽつり。
「初めての女……」
玲華はその言葉に舞い上がる気持ちを必死で押さえ、どうにか落ち着いた表情を作った。
「じゃ、早起きして、待ってるね」
そんなこと大したことではない、という気持ちを装いながらも、玲華の声は嬉しさのあまり微かに震えていた。