極上エリートの甘美な溺愛


翌日、心ここにあらずという様子の玲華は、篠田とお客様のところへ行ってもなかなか仕事に集中できず、時折はっと気づいては三つ子にからかわれ、その都度篠田にも怪訝な顔を向けられた。

将平との再会によって展開している思いがけない流れ。

ふたりで会うことも、親しく言葉を交わすこともこの先二度とないだろうと諦め、心の奥にしまいこんでいた大切な存在。

今再び将平への思いが体中に溢れ、その思いだけに自分が支配されていると実感している。

ずっと将平の事が好きだったんだと、玲華が気づくのは簡単だった。

これまで恋人が一人もいなかったわけではないし、深い付き合いを続けたこともある。

けれど、そのどれもが長続きせず、完全に相手を好きになったことはなかったように思え、玲華の気持ちは更に沈んでいく。

不完全燃焼のまま終わった将平への恋は、未練だけを残して玲華の心にくすぶり続けている。

一体、これからどうなるんだろう。

そう思って再び不安になる自分をどうにか浮上させ、玲華は敢えて将平と過ごす幸せな時間を想像してみる。

あまり期待しないように自分の心を引き締めながらも、本心では、水曜日に二人で出かけることが楽しみで仕方がないのだ。

それも早朝から迎えにきてくれるというオプション付き。

玲華がそのことを楽しみにしないわけもなく、ふと気づけば将平のことばかりを考えていた。

高校時代だって、二人きりで出かけたことなんてほとんどなかったなと振り返ったり、何を着ていけばいいんだろうかと考えながら一日を過ごし。

ようやくその日の仕事を終えることができた。





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