極上エリートの甘美な溺愛
玲華は将平の横顔がほんのり赤く見えるのは気のせいだろうかと思いながらも、それは聞かずに肩をすくめた。
「でも、篠田さんの車に乗っていても、私はいつも図面を見ながら乗っているから、景色をゆっくり楽しんだりできないの。だから、今日はデートみたいで嬉しい」
緊張感と、将平の隣にいられる嬉しさもあるのか、何か話していなければ間が持たないとでもいうように玲華は早口で話し続ける。
そして、思わず言ってしまった自分の言葉に気付いてはっとした。
「あ……ご、ごめん」
調子に乗って、デートと言ってしまった。
なかなか諦めきれない将平への思いを隠し切れなかったのか、つい呟いたその言葉に照れて俯いた。
車内に続く沈黙に身を小さくしながら、膝の上で手をぎゅっと握りしめていると、くすっと小さな笑い声が響いた。
「じゃ、今日は仕事を忘れてデートしよう」
「え?」
「ん? 俺、最初からそのつもりだったんだけど?新車に初めて乗せたのが玲華だっていうのもかなり嬉しいしさ。
こんなに朝早くから出かけてデートじゃなくてなんだっていうんだ?」
「えっと、それは、その……」
優しく響く将平の声。
恥ずかしくて顔を見ることもできず俯きながらも、玲華は将平の言葉が嬉しかった。
高校の卒業式以来、久しぶりに会ってからそれほどの時間も経っていないことを考えると、今の将平の言葉に特に深い意味なんて含まれていないことはわかっている。
けれど、将平が『デートしよう』と言ってくれたことに、予想外の温かさがこみあげてくる。