極上エリートの甘美な溺愛
「いや、いいんだ。この車を気に入ってくれて、良かったってそれだけだ」
「あ……うん。乗り心地、抜群だよ……燃費もいいって雑誌に書いてあったし」
「まあ、今はそれが第一条件みたいなもんだからな。環境に配慮したものじゃないと受け入れてもらえないし。それは、家だって同じだろ?」
「そうだね。断熱性能は良くて当たり前だから、それは自動車と一緒なのかも」
「だな」
将平の口を突いて出てくる言葉はごく自然で、特に気にかけるものではないと感じながらも、玲華は少し前に聞き逃した言葉が気になって仕方がなかった。
車のスピードが上げられた途端に呟かれた言葉。
それは意識してのことなのだろうか。
「将平……?」
そのことを確かめる気持ちをこめてそう呼びかけたと同時に信号が青に変わった。
「もう少しかかるから、のんびりしてろ」
何事もなかったかのようなあっさりとした将平の声に玲華は黙って頷き、助手席に体を預けた。