極上エリートの甘美な溺愛

「んー。残念ながら、ない……かな」

「なんだよ、その微妙な言い回しは」

「だって、社内恋愛が多いなんて言ったばかりなのに、私は一度もない、なんて恥ずかしいっていうか……」

俯き、次第に小さくなる声。

社内恋愛に限らず、それこそ身を焦がすような恋愛には縁のない自分が恥ずかしい。

大学時代の恋愛だって、好きという気持ちがあったとはいえお互いを求めて切なく涙するとか、声を聞くだけで心ときめく、なんてことはなかった。

単に一緒にいて居心地がいい、それだけの付き合いだったような気がする。

そして、そんな幼い恋愛しか経験のない自分が恥ずかしく、居心地の悪さを感じていた。

顔を赤くしながら俯く玲華の様子を横目でちらりと見ながら、将平は安心したように口元を緩めた。

「あー、笑った。そ、そりゃ私は将平と違ってもてないし恋愛下手だけど、笑うことないでしょ」

拗ねた口ぶりの玲華に、将平はにやりと笑った。

その表情はどこか嬉しそうで、明るい。

「恋愛下手かどうかは知らないけど、とりあえず社内の誰のものにもなっていなくて良かったよ」

「か、からかってるでしょ。そりゃ、昔から女の子に人気絶大の将平だったら社内恋愛の一つや二つは……ううん、もっとしてるのかもしれないけど」

「あのなあ。俺だって上手に恋愛をこなしてきたわけじゃないって言ってるだろ?どちらかと言えば人に自慢できるような過去じゃないんだ。それに、社内恋愛はひとつもしてない」

「嘘」

「ほんと。……社内恋愛なんて、別れたあと面倒なだけだろ?」


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