極上エリートの甘美な溺愛
視線は前に向けたまま。
そして、ハンドルを握ったまま。
その声音が苦しげに聞こえたのは気のせいだろうか。
玲華は俯いていた顔を上げて、隣の将平に視線を向けた。
感情を宿していないような横顔に、はっとする。
「将平?」
呟いた玲華の不安げな声に気付いて、将平は小さく肩をすくめると、
「社内恋愛をして、もし別れたらその後の仕事にも影響が出てくるだろうし、気まずい相手としょっちゅう顔を合わせるなんて面倒だろ?俺には、無理だな」
どこか投げやりで冷たい言葉が、静かな車内に響いた。
エンジン音にまぎれることのない将平の言葉がはっきりと聞こえ、玲華はその冷たさに戸惑った。
将平が玲華を迎えに来て以来、明るい雰囲気と軽やかな会話で心地よい時間を過ごしていたというのに、その空気は一変、どこか重苦しいものが感じられた。
将平の横顔にはその心境を推し量るものは何も浮かんでいなくて、ただ淡々と運転を続けている。
社内恋愛に、何か嫌な思い出でもあるのだろうか。