極上エリートの甘美な溺愛
玲華の顔は真っ赤で、照れていると一目でわかる。
そんな様子を間近で見ている将平がそれに気付かないわけもなく、右往左往している玲華を見ながら嬉しそうに笑った。
「えっと……将平、この手をどうにか……」
「この手?ん、そのうちにな。それより、高校生の時とは違って、大人の玲華からは甘い香りがする」
「甘い?」
「こんないい香りをまとってるなんて、もう高校生じゃないんだなあって実感する。あの頃の玲華は、石鹸の香りしかしなかったからな」
思い返すように笑う将平の顔が自分の間近にあることにも、耳元に落とされる声にも、そのすべてにびくりと体を震わせる玲華に、将平は更に体を寄せた。
「もう、高校生じゃないんだ。あの頃よりも近づいてもいいだろ?それに、今日はデートなんだしさ」
艶めいた声からは、腰に置かれた手を離そうとする意志はまるでないようで、玲華はひきずられるように店へと進んでいく。
腰から伝わる将平の指先の動きに反応するように鼓動はとくとくと弾み、不自然に響くのはハイヒールの音。
入口まであとどれくらいだろう。
心臓、もつかな。
玲華が手にしていたカバンは当然のように将平が手にとり、軽い足取りからはこの状況を楽しんでいるようで。
「将平……」
焦る気持ちを隠せない玲華の声にもふっと視線を落としてみせるだけだ。
「玲華のお気に入りが『Rin』だけなんて、我慢できないし」
「え?」
将平はそう言葉にすると、入口のドアに視線を向けながら、玲華の耳元に口を寄せた。
「俺にも、興味、持て」
吐息とともに落とされた言葉はかなり小さな声だったにも関わらず、玲華の心の深い所にまで響いた。