極上エリートの甘美な溺愛
その言葉を頭の中で反芻するものの、理解できない。
「将平……?」
身動きもとれず俯いたままの玲華は、心の中で何度も「反則だよ、そんな声」と繰り返し体中が熱くなるのを感じる。
力が抜けた体は自分の意に反して将平に向かって寄り添うように、ふらり、足元がぐらついた。
「さ、おいしいもん食べようぜ」
将平は照れて真っ赤になった玲華の顔を覗き込みながら、いたずら気味に声をかけた。
余裕が満ちているように思えるその表情を上目づかいに見た玲華は、更に体が硬直してしまう。
格好良すぎるんだよ……。
高校生の時とは違うとわかっているつもりだったのに、実はわかってなかったんだ。
あの頃より何倍もたくましく、そして大人になった。
離れていた間の将平の成長はきっと、彼自身の努力によるものだと、その精悍な横顔を見ながら思った。
「俺もここにくるのは久しぶりなんだ。『リブロ』と同じく、小さな頃から俺の胃袋を満足させてくれた大切な店だから、玲華も気に入ってくれるといいけど」
楽しげに呟く声はあまりにも落ち着いていて、玲華は自分ひとりが右往左往しているように感じた。
将平にとってはこうして女の子を連れて出かけるなんてよくあることなのかもしれない。
そう思った途端、思った以上に胸が痛むのを感じる。
「電話しておいたから、席はあると思うんだけど」
「あ……うん」
玲華は将平に捕まえられた獲物のように体が震えるのを感じながら、背中をそっと押す彼に抗うことなくお店の中へと歩を進めた。