極上エリートの甘美な溺愛
そろそろランチタイムだということもあり、店内のほとんどのテーブルは既に客で埋まり、賑わっていた。
壁面には天井まで届くほどの棚が設けられていて、ワインがぎっしりと並んでいる。
感嘆の吐息と共にそれを見上げながら歩いていると、ふと点在する緑が目に入った。
ところどころに置かれている観葉植物が白い店内のアクセントとなり、目にも優しく感じた。
相変わらず背中に回された将平の手を感じながらも、玲華は店内の雰囲気にほっとし、トマトソースだろうか、おいしそうなにおいに気持ちも落ち着いてくる。
「将平くん、いらっしゃい。奥のテーブルでいいかしら?」
不意にかけられた声に視線を上げると、カウンターの向こう側にいる女性に気付いた。
赤いエプロンをつけたその女性は、トレイに乗せた料理を手に忙しそうにしながらも、将平と玲華に明るい笑顔を向けた。
玲華や将平から見れば母親に近い年齢だろうその女性は、将平が抱き寄せている玲華を温かい瞳で見つめながら言葉を続ける。
「今朝電話をもらってから、ずっと待ってたのよ。将平くんがとうとう女の子に捕まったんだと思ってわくわくしてたのよ。ふふっ」
「藍香さん、それはまだ早いから」
「へえ、手こずってるってこと?」
「……今後に差し支えるのでノーコメントで」
「あら、そうなんだ。ま、いいわ。とりあえず座ってよ。すぐに行くから」
くすくす笑う女性に苦笑しながら、将平は店の奥にある窓際のテーブル席についた。
躊躇なく腰をおろす将平に続いて、玲華は明るい雰囲気の店内を見回しながら向かいの席に腰をおろした。