極上エリートの甘美な溺愛
20人ほどが入れば満席になる、それほど広くはない店内だけれど、カウンターの上や、窓のサッシの上で綺麗に咲いている花。
そして壁際に置かれた小さなテーブルの上にある野菜が入っているバスケット。
店主の気遣いがところどころに見受けられる優しい雰囲気に、緊張気味の玲華の心も少しだけ落ち着いてくる。
さっきまで腰に添えられていた将平の手が離れた途端、寂しく思えたことは考えないようにしながら、手元のメニューを広げた。
手書きのメニューに書かれている品数はそれほど多くはないが、どれもおいしそうな料理の写真を見ながら何を選べばいいんだろうかと首を傾げた。
玲華と将平の視線が絡み合った。
すると、そんな玲華の様子をずっと見ていたらしい将平が身をのり出し、玲華に顔を寄せた。
「ドリア、これは外せないけど、他の料理も文句なしにうまいから、食べたいものを選べよ」
玲華は将平との近すぎる距離に内心あたふたしながらも、それを顔には出さずにメニューをじっと見つめ続けた。
まるでそれ以外何も見えないように。
少しでも動けば将平の唇が自分の頬に触れそうになる近い距離に緊張しながら、ひたすらメニューを見ても、全く頭には入らないけれど。
「じゃ、ドリアと……えっと。サラダ、頼んでもいい?」
どうにか選んだサラダを指差すと、将平の体が更に目の前に近づいた。
「じゃあ、この蒸し野菜のサラダは?野菜はすべて藍香さんと旦那が自分の畑で作ってるんだ」
「へえ、あ、じゃあ、それを頼もうかな……」
「ああ。きっと、気に入るはずだ」
小さな声でようやく答えた玲華は、何か含みを感じる声が気になった。
気のせいだろうか、「気に入る」という言葉だけ、妙に力が入っているような気がする。