極上エリートの甘美な溺愛
再会してからこれまで、特に艶めいた展開はなかった……と感じている玲華にとって、今日の将平の言葉や仕草には驚かされてばかりだ。
朝早くからふたりで出かけること自体、不自然な展開であり、将平の車の助手席に座ることも同様で。
「仕掛けられた私は、将平の獲物かなにか……?」
思わず戸惑いの声がこぼれた。
ふたりの間に、ほんの少しの緊張感が漂い、口元を緩めた将平が何かを答えようとそっと口を開いた。
瞬間、近くのテーブル席から大きな笑い声があがり、ふたりして視線を向けた。
「婚約おめでとう!ようやくまとまったな。転勤が決まった時には別れるんじゃないかとひやひやしたけど、結局はそのおかげの婚約だもんな。いやー、めでたい。アメリカに行ってもふたりで頑張れよ」
続く乾杯の音頭と共に、グラスがいくつもの幸せの音を響かせる。
10人ほどが席についたテーブルは騒がしく、店内の雰囲気からはかけ離れているが、お祝いの席だとわかる言葉が次々と飛び交い、周囲の人も穏やかに見守っている。
婚約したに違いない二人を見れば、照れくさいながらも顔を見合わせる様子は微笑ましく、窓の向こうから降り注ぐ太陽の光以上に輝いていた。
色白でぽっちゃりとした頬が可愛らしい女の子。
そして、そんな彼女に愛しげな瞳を向ける男性は、彼女よりも年上に違いない。
きっと彼女のことが可愛くて可愛くて仕方がないんだろう。
寄り添う距離も、くすくす笑うタイミングも。
全てが甘くて眩しい。
そんな二人から視線を外せないままでいる玲華の手を、将平がぎゅっと握った。
テーブルの上で重なりあう二つの手。
ぼんやりとしていた玲華の意識がはっとそこに向けられて、驚いたように将平を見つめた。