いつか見つけてね。

おばさんと一緒にお蕎麦を待つ間にさっきの天女の話が気になったので聞いてみた。


「この先に湖があるのね、そこに昔天女が降りてきて水浴びをしてたのね、すごく綺麗な天女でね、


それが、山に山菜を取りに来ていた男性に見られて、

彼は一目ぼれしちゃったの。


天女は水浴びが終わると、羽衣をつけてそのまま、また天に戻っていったわ。



でも、その彼はまた彼女に会いたいと毎日その湖に足を運んだの。


そして、ある日彼は天女が水浴びをしに降りてくるところを見たの。

そして、それがうれしくて身に着けていた羽衣を隠したの。

天に戻れないように。


それからどうしたと思う？」


「さあ？」


「その男性は天女に言ったの。俺が隠したって。

そして、告白したの。


結婚してくれて、１０年したらその羽衣を返すって。」


「で、天女はどうしたんですか？」


「結婚したわ。そして、子供も生まれた。男性と一緒に幸せな生活を送っていたの。



でもね、１０年して天女は羽衣を返してくれって、迫ったの。


まさか、そんな幸せな生活だったのに、天女が天に帰りたかったなんて思わなくてね。


そして、」



「そして、どうしたんですか？」

「男性は羽衣を隠し続けた。でもね、天女がふとしたきっかけで見つけたの。

もう、その時には迫られてから何年もたっていたのよ。

だから、彼は天女がどこにも行かないって思ったんでしょうね。


でも、未練はあるけど、帰らないといけないからって男性と子供を残して天に帰っていったの。



その後から、ここら辺で取れる山菜がとびきりおいしくなったんだって。


って言うのが伝説。」

「どうして、天女は帰ったんですかね。

私なら絶対その幸せな家庭を壊してなんて考えられない。」


「そうよね、幸せな生活をわざわざ壊すことなんてね。」


おばさんと話があって少し気がまぎれた。


そして、私はおばさんに自己紹介して、なぜか私の身の上を聞いてもらいたいと思った。


多分、幸せな家庭を壊そうとしていたのかもしれないと思ったから。

人生の先輩に会えたみたいな、そんな気分だったから。