いつか見つけてね。


料亭に入るとすぐに女将が出てきて俺を案内してくれる。

顔馴染みだから気兼ねなく土産に何か作ってほしいと頼むと


「あら、ここでゆっくりされたらいいのに、

しとやかな気の利くお嬢様ですね。」

何故、俺の彼女がしとやかで気が利くなど言うんだろう、と疑問に思いながらも


「やはり、ゆっくりここの料理を後で堪能したいですからね。

楽しみは後においておきます。」



と言うと女将は、御贔屓ありがとうございます、と案内してくれた。




大広間に入ると既に皆到着していて、俺もすっと入り込むとひとりひとり挨拶をする。


「なかなか綺麗な方じゃないですか、

社長就任と同時に結婚のめでごと、来年はいい年になりそうですね。」


「はあ?

結婚まではいたしませんよ。


まだ学生ですから。」

「それは、どういう事で?」


みんなが俺の動向を伺っている。とそこに、倉梯会長が話に筋が通るように加えてくれた。




「そちらのまりなさんとの結婚では?」


また酷い勘違いがここでも行われている。


「いいえ、彼女は会社秘書で、私とは仕事関係のみです。」


「おやおや、そんなこと言って。


ま、そういうことにしておきましょうか。」


ふと部屋を見やると、秘書課のメンバー全揃いで女子は着物を着ており、男性はスーツに身を固めて仕事してくれている。

もちろんそこにはまりなもいた。

やはり目を引く、着物もレンタルでなく自前だろう。

そして目立つように大振りの指輪がキラキラ輝いている。


それも、左薬指。


なんでも既成事実を作って俺との結婚に追い込もうとしているのかのように思えた。


妹尾がそっと側に来て


「社長、そろそろお座りになって下さい。」



会食の席に座る。


もちろん秘書は別室、


「妹尾、あいつの暴走を止めろ。もう帰らせるなり何なりと手段は選ばない。」


わかりましたと席を後にした妹尾はそのまま別室へ行った。



その時、遅くなりましたと遅れてやってきた人物を座った席から見上げた。




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