いつか見つけてね。
岳斗君は電話があってから30分もしないうちにやってきた。

マフラーをしてニット帽をかぶり、編上げのブーツにダッフルコート。

すごくおしゃれで、雑誌から抜け出たみたいなそんな感じだけど、今日は天気も良くて極寒じゃない。

「モデルみたいだね。

でも寒がりだよね、岳斗君。」



というと


「アメリカからかえってこの気候は寒すぎ。

それにちょっと朝飯のあと出かけたいところあるしさ。


付き合ってくれる?」


「いいけど、遅くならないよね?

夕方には帰りたいから。」


「おう、もちろんそんなに長くないから。





朝飯おごるから、ありがとな。」


「うん、どういたしまして?」

というと少し混み合うベーカリーで私はワッフルとココア、岳斗君はデーニッシュとオムレツとコーヒーを頼んだ。


「今日は付き合ってくれてありがとう。


忙しかっただろ?」


「大丈夫、

思ったより掃除すぐに終わってね。

実家にいたら絶対終わらなかったけど。」


「両親アメリカに行ってんだろ?

エミは一緒に行かねーの?」


「本当は帰ってくるはずだったんだけどね、患者さんのことが気になるみたいでね。


だから、来月には多分帰ってくるから。


それに、彼氏いるから。」

彼氏のところは少し恥ずかしくてつぶやいた。


「ラブラブかよ、


妬けるな。」


「兄貴優しい?」

「うん、優しいよ。」

「そっか。

来年からどうなるかな?

エミのこと、









新しい仕事始まるからな。」


「社会人だしね。しょうがないよ。」

「それだけだったらいいけど。」


少し刺のある言い方に聞こえたけど、その後に


「これうまそーだな。

一口頂戴?」

そう言って私の刺したワッフルを私の手ごと口に運んだ。


「ちょっ、

も~。



ほら、クリームついたじゃん。」

急に手を引っ張られたから反対の手でフォークを取り返そうとした時ニットの袖がワッフルにかかってたクリームをかすってしまった。


「ごめん、


ゴメンな。別に悪気があったわけじゃなくて。」


すごく申し訳なさそうに謝るから


「ちょっと洗ってくるから、大丈夫。」

そう言って私はトイレに行った。

やっぱり袖が少し冷たくて腕まくりしているけどニットは乾かないよね、なんて思いながら戻ると岳斗君の前におしゃれなかわいい女性が座ってた。


「お待たせって、ごめんお邪魔だった?」

とにっこり見やると

「そんなんじゃねー、相席だって。


さ~行くぞ。」


すっと立ち上がってコートを羽織ると私のコートを持って歩きだした。


「俺、エミが来るの待ってただけなのに、なんか馴れ馴れしくってさ。」

岳斗君は女性に話しかけられるのあんまり好きじゃないみたい。


私は家族みたいなもんだからね、大丈夫なんだろうけど。



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