恋愛論



由宇の家は本当にすぐ近くにあった。


割りと綺麗な1DK。


部屋の隅にはベッドがあって、あたしはそこに寝かされた。


…元彼のベッドに寝るなんて思いもしなかったなぁ。


そんなことを考えていると、由宇が言った。


「俺シャワー浴びてくるけど気にせず寝てて」


そう言って由宇はバスルームへと入っていった。


あたしは落ち着かなくて、周りを見渡す。


枕元には何枚かの写真が張ってある。


男の子も写真とか飾るんだ。


そんなことを思いながら写真を見る。


中学の頃の野球部。


高校の野球部。


中三の夏休みキャンプ。


これは高校の集合写真?


三年六組か。


今でもなくて、中学の頃でもない。


あたしの知らない由宇がいた。


「何見てんだよ」


いつのまにあがってきたのか、隣には由宇がいて。


タオルで髪を拭きながらあたしを見ていた。


一瞬あたしがビクッとすると、由宇は笑って言った。


「何もしねぇって、病人相手に」


「…相変わらず真面目だね」


あたしがそう言うと、由宇はまた笑顔で言う。


「それが俺の良いところだもん」










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