恋愛論
恋愛論
凌はあたしに小さな声で謝ると、パソコン室を去った。
「大丈夫?」
由宇が優しく微笑んで、あたしの服を整える。
「あ〜ぁ。手首痣になってる」
由宇がそう言ってあたしの手首をいたわるようにみつめる。
「ほんと馬鹿だな、早紀は」
笑ってあたしの目を見る。
まるで何もなかったかのように。
「…何で?」
あんなこと言ったのに、何でそんなに優しいの?
「困ってる奴助けるのは当たり前だろ?」
由宇が言う。
「そうじゃなくて…あたしひどいこと言ったのに」
あたしが言うと由宇は少し考える。
「そりゃさっきはムカついたけどさ」
由宇が少し微笑んであたしを見る。
そして真剣な顔になる。
「俺のほうがヒドイ奴だから」
「え?」
由宇は俯いて黙ってしまう。
あたしはどうしていいか解らず、ただ由宇を見つめる。
「早紀レポートは?」
由宇の言葉でレポートの存在を思い出す。
「出して来なよ。おれ戸締まりして門のとこいるから」