恋愛論
由宇の家までの二十分。
あたし達は一言も話さなかった。
何度か由宇と目が合ったけど、しばらくしたらどちらともなく目を逸らした。
周りから見たら変な二人。
けれど、あたしはそれでもよかった。
隣に由宇がいる。
もう二度とあたしには笑いかけてくれないと思った。
もう二度とあたしには話し掛けてくれないと思った。
もう二度とあたしには優しくしてくれないと思った。
だから今のこの時は、夢のようで。
自分の手を何度もつねって見た。
その痛さが現実の証拠で。
その痛さが嬉しかった。