恋愛論
「清水って呼ばれたとき。畑中との事を聞いたとき。早紀じゃなくて塩屋さんがここにきたとき。すっげぇショックだった」
あたしの涙をまた拭って、由宇が続ける。
「畑中とのキスを見たときも。早紀の涙を見たときも。周りなんか見えなくなってた」
そっとあたしの額に由宇がキスをする。
「早紀の幸せを願うよ」
由宇の思う好きは『相手の幸せを願うこと』。
あたしはさっきとは違う涙を流した。
自分はいつも何処か冷めてて。
素直になるってことが出来ない人間だと思っていた。
だから由宇に憧れた。
いつでも真っ直ぐな由宇に。
自分は皆よりも汚れてて。
こんな風に泣けるなんて思ってなかった。
だから川崎さんに嫉妬した。
外も中も綺麗な川崎さんに。
「好きだよ」
由宇が優しくそう言う。
「………好き」
あたしもそう答えて。
そっと軽い口付けを交した。