恋愛論



「ごめん」


聞こえたのは確かにあいつの声。


パソコン室から出てきた女の子は確か数学科の子。


あたしはその子と入れ違いに部屋に入る。


…ほらやっぱり。


「忘れられない好きな人って元カノ?」


あたしが尋ねると由宇は振り替えって首を振る。


「俺の元カノはお前だけだし」


…へぇ、つまり片想いか。


あたしは近くの席に着いてパソコンを付ける。


由宇も何も言わずに作業を続ける。


しばらくして、由宇が席を立って帰り支度を始める。


「お先に」


由宇はあたしの横で立ち止まって言う。


「忘れられない人を忘れるには、他の子と付き合うのがいいと思うけど?」


お節介だと思ったけど、つい口に出してしまった言葉。


由宇は苦笑いしてこう返した。


「好きな子としか付き合わない主義だから」


教室を出る直前の由宇に聞く。


「じゃ、あたしのことも好きだったの?」


由宇は小声で、当たり前だろって言って出ていった。


告白したのはあたしからだったし。


もちろんこれっぽっちも好きじゃなかったのに。










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