月夜のメティエ

　すぐに転送されてきた往復ハガキには確かに中学の同窓会と明記してあった。

「１ヶ月半後か……」

　少しだけ億劫だったけど。ほとんど連絡を取っていない人達の中に行って、楽しいのだろうか。中学の時に仲良しだったマーコだって、高校は一緒だったけどあたしは大学で彼女は看護学校。ちょいちょい連絡は取ってたけど２４歳の時にぱっぱと彼氏と入籍しちゃって隣の県に居るし、子供も居て忙しそうで、だいぶ連絡を取っていない。もう連絡先変わっちゃっただろうな……。

「あ、あたしも番号変えたんだった。教えてないや」

　週末にでも、電話してみようかな……。同窓会のこと、案内が行ってたら聞いてみようか。
　会社から帰ってきて、スーパーの値引き品をつまみながらビールをひとくち。エアコンが部屋を暖める音を聞きながら、ハガキの参加、欠席の文字をずっと見つめていた。


***

　朝が来て、バタバタと身支度を整えて部屋を出る。
　コートが無いともう寒い時期になってきた。そろそろ出そうかな。そう思いつつ、また用意しないで家を出てしまった。寒い。

　最寄り駅から電車に乗って、出勤通学ラッシュにクルクル巻き込まれながら改札を出る。大きな駅構内は、朝と夕方、人でごった返す。あたしは７センチのヒールで駅の床を鳴らして会社へと急いだ。あまり高いと動きにくいし歩き方も格好悪い。９センチはお出かけ用。

　こんなにたくさん人が居るんだけど、知り合いに会わないよなぁ。今の友達はまず出くわさないし、それこそ中学の同級生なんて会わない。会ってても気付かないだけなのかな。不思議。コート姿もちらほら見かける人混みをすり抜けて行くあたしのバッグには、同窓会のハガキが入っていた。