月夜のメティエ
「ちょっとさ、聞きたくて。中学の同窓会のお知らせ来たんだけど」

「あーそれそれ、なんか実家から連絡来てた。そういえば。同窓会あるってよ~とか言ってた」

 マーコの実家にも連絡が来ていたんだ。どこまで連絡行ってるのか分からないけど、ここ2人は分かったということだ。

「朱理は行くの?」

「うーん、どうしようかなって」

 10年以上経って今更同窓会かよって思うんだけど。行けば行ったで楽しいのかなあ。

「マーコ、子供連れて?」

「うち、旦那が子供見てるから行ってきたら? って言ってくれてるんだけど」

「へぇ、お留守番できるんだ」

「ああ、うちパパ大好きだからねぇ」

 えへへ、とマーコが笑ってる。そうか、マーコのご主人がそう言ってるなら、2人で参加してみようかな。

「そっちから出てくるの遠いかもしれないけど。どう、一緒に行こっか」

「うわーちょっと風呂あがってきたら旦那にもう一回聞いてみる! 子供見てるって言ったよねって問いつめるわ」

 ここまで来たら、話が早い。参加の返信を出すだけだ。あたしは電話の向こうに聞こえないようにビールの缶を空ける。

「おっけー。あたしの番号ね、変わったから、これで」

「LINEやってないの?」

「……ごめん、やってない。今みんなそれだなぁ」

「タダだしやればいいのにー。やったらID教えるわ」

「その時は連絡するよ」

 たぶん、やらないと思うんだけどLINE。そういうのなんか苦手。

「じゃあね。あとまた連絡するわ」

 電話を切り、ビールをあおる。夕食の支度も面倒で、冷蔵庫にあった魚肉ソーセージだけかじった。

 次のお給料で、新しい服を買って、美容室に行って……ネイルと、まつ毛エクステもしようかな。テレビを観ながら、色々とやりたいことを巡らせる。そのうち酔いが回ってきて、眠気もやって来たから、電気を消してベッドに潜り込んだ。

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