月夜のメティエ
「相田って週末が休みなんだろ? 金曜とか土曜に来てゆっくりして行ったら? 店の人に行っておくから」

 そう言ってくれたんだから、行くしかない。金曜の仕事帰りに行くことにしていた。

 上の空で仕事してる自覚があって、なんかまた失敗して遠坂部長にグチグチ言われそうだなぁ、なんて思っていた。ああ、そんなこと思いながら仕事しちゃダメよね……ここらへんがなんかこう、仕事して給料貰ってる自覚とやる気が無いんだろうな……。

「相田さん、また本店から指摘来てたぞ。FAX! やる気無いんじゃないのか?」

 ほら来た。

「いえ、やる気はあります」

 言い返してしまった。空回りしてるだけ。追い込むようなこと言わないでおじさん!
 何してもうまく行かなくて、失敗ばかりの時期がある。本当に、仕事するって大変。遊んでんじゃないんだから。

 カズヨ先輩の、先日の急な休みは、風邪をこじらせたからだったそうで、1日で復活してきていた。「ごめんねー」とマスクをして出勤してきたから「無理しないでくださいよ。先輩に倒れられたら本当に泣くほど困ります」と話した。

「大丈夫。相田さん1人でもできるんだから」

 少しかすれた声が切ない。

「旦那ちゃんに休めって言われたんだけど、そうそう休んでられないから。熱無いし」

 具合が悪く無いなら良いけど……。

「はい。お大事にしてください」
「ありがと」

 新人くんも、カズヨ先輩が居なかったから面倒見る人が居なくて心細かったに違いない。あたしも入社したての頃、カズヨ先輩が付いていてくれたから。

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